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星と僕たちのあいだに
第11章 夏の終わりに
二日後―――――
ロケ現場での撮影中、渡瀬からメールが入った。
手が空いたらすぐに電話してこい、というものだった。
容態が急変したのかと、圭司はすぐに電話をかけた。
二つ目のコールでつながると、渡瀬は慌てた様子で、さっき麻衣が病室に来たと言った。
《今までお世話になりましたって、
麻衣ちゃん、倉庫出てくって。
圭ちゃん、どういうことなんだよ?》
電話口でうろたえる渡瀬が圭司にはおかしかった。
そして、荷造りをする麻衣の姿を想像した。
『ああ、そうだ麻衣は出て行くんだ。
一応、洋介にも声かけてあるんだ。
引越しのことで麻衣が泣きついてきたら
助けてやってくれって』
《はぁ? バカか圭ちゃん。
段取りの話じゃないんだよ。
なんで、そんなことになったんだよ。
結婚するんじゃなかったのか?
俺はてっきり、式の打ち合わせで、
麻衣ちゃんが来たんだと思って……》
もはや渡瀬は涙声だった。
圭司は笑いをこらえながらも、自分たちの恋路を案ずる渡瀬の存在をありがたく思った。
『結婚はできなくなったんだ。
麻衣に新しい目標ができたんだよ』
《新しい目標? なんだよそれ》
『うまく言えないけど、
俺はそう思ってるよ』
渡瀬は少し間をおいて、麻衣に別の男ができたのか? と訊いた。
その言葉は圭司の心に突き立ったが、圭司はいたって平静をよそおった。
『まぁ、平たく言えば、
そういうことになるな』
《よくそんな落ちついてられるな。
取り返さないのか?
麻衣ちゃんのこと好きなんだろ?
まだ愛してんだろ?》
挑みかかるような口調で「愛してる」という言葉を、まだ日の高いうちから照れも恥ずかしげもなく口にする渡瀬に、圭司はいささか尻こそばくなるものを感じた。