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星と僕たちのあいだに
第11章 夏の終わりに
『お前さ、さっき
衣替えがなんとかって言ってたけど、
それじゃまるきり同じだよ。
そりゃ早苗への侮辱だぜ。
俺だって傷心の身なんだ。
はいそうですか、じゃ次って、
そう簡単に行けるもんじゃないよ』
話の流れでそう答えたが、よく考えると、なぜ渡瀬が代弁できるほど、早苗の気持ちを理解できているのだろうかと圭司は思った。
モデルのアイテム換えが完了し、スタッフが声をかけにきた。
皆が圭司を待っている。
『そろそろ仕事に戻るよ。
そうだ、クルマ換えるんだ。
退院したらまずはドライブだな。
新しい流星号に乗せてやるよ』
そう言って圭司は電話を切った。
現場では多くの人間が役割をまっとうしようと懸命に動き回っている。
女性スタッフが撮影し終えたアイテムを整理していた。
衣装ケースを抱えて運ぶ様子が、倉庫で荷物を片付ける麻衣を想起させた。
誰の助けも求めず一人で頑張ってるんだろうか。
たいした荷物ではないだろうが、手伝ってやるとこちらから声をかけてやればよかったと、圭司は少し後悔した。
ふと、前の男のアパートから仲間うちで麻衣の荷物を運び出した、去年の秋の一日を思い出した。
――――(あれからもうすぐ一年か……)
早いものだなと思いつつ、今度は自分が置いていかれるのかと、つれない気分で高い空を見上げた。
終わりゆく夏を食い止めようとするかのように、空には入道雲が湧きあがっている。
それがどこか哀しげに見えるのは、女に逃げられる男のひがみだろうと、圭司はふがいない気持ちでニコンのストラップをつかんだ。