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星と僕たちのあいだに
第2章 優しい場所
『ふん、惚れたか?』
『いやそうじゃない。
俺は早苗が好きだ』
圭司はホッとしたが、渡瀬の言葉の意図がまだ読めなかった。
『早苗に打ち明けようと思ってるんだ』
渡瀬はそう言った。
布石の多い話だな、と圭司は笑ったが内心は複雑だった。
圭司はこれまでにたびたび、早苗からの好意を感じたことがあったからだ。
もちろん、渡瀬の気持ちを知っていた圭司はそのことをおくびにも出さなかったし、できるだけ早苗と二人になる機会を持たないようにしてきた。
つき合っていた女性と一年前に別れた圭司は、ちょうど入れ替わるようにして倉庫へやってきた早苗に性的な欲望を抱くことはあったが、失恋して間なしの自分が早苗と肉体関係を持ったあと、共同生活をうまくやっていく自信がなかった。
そうこうするうちに早苗への想いを渡瀬に打ち明けられ、それが圭司の性欲の歯止めとなっていた。
『ふぅん、それで、
麻衣ちゃんが神の使いってのは?』
『圭ちゃんにパートナーが
現われたってことだよ』
『なるほどな』
ジュラルミンケースに機材を収めた圭司は、ベッドの上にボストンバッグを放り、着替えをつめながら話を続けた。
『麻衣ちゃんは男に捨てられたばかりだ。
まだまだ時間が必要だよ』
『でも圭ちゃんと麻衣ちゃんは似合ってる。
出会いも運命的だし』
『運命を感じる出会いほど
長く続かないって言うぜ』
圭司が笑うと、渡瀬も爪をいじりながら息を漏らすようにして笑った。
『浩ちゃんが早苗に告白するのに、
俺の許可はいらないよ。
気ィ使いすぎだよ』
『早苗は圭ちゃんが好きなんだよ』
渡瀬の一言に、圭司は胃の上のほうを掴まれたような感覚をおぼえた。