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星と僕たちのあいだに
第11章 夏の終わりに
 

翌日、朝食を済ませた圭司は、突然の客を丁寧にもてなしてくれた主人に礼を言い、ついでに秋の少年サッカー大会にあわせて宿泊予約をし、宿を出た。

ワゴンに乗りこむなりメールが届き、画面を見てくすりと笑った。

《本日から
 料理長を務めることになりました、
 並木早苗と申します。
 
 夕飯のリクエスト受け付けます。
 ①カレー
 ②焼肉
 ③パスタ
 イチオシはカレーかもね》


早苗らしい茶目っ気のある文面に、圭司はたくさんの思いやりを感じた。

――――(さすが早苗だな。気がきいてるよ)

心配していたことをうかがわせる言葉はどこにもないのに、早苗が一晩中、気を揉んでいたことが、圭司には十分なほどわかった。
二年もつきあえば、メールひとつで相手の思うところは見えてくる。
おそらく早苗は、麻衣が倉庫を出て行ったことを何らかの形で知ったのだろう。
そのうえで、連絡もせずに一晩倉庫を空けた理由を察し、そっとしておいてくれた。
おしつけがましくないところが、かえっていじらしい。

『ご心配おかけしました……っと』

シェフのおすすめで、と返信して圭司は家路についた。


三時間ほど高速道路を飛ばし、地元の料金所を出たところで安藤佐和から着信があった。
かねてから推していた圭司の写真集企画が稟議を通り、具体的に進めることになったと、普段クールな佐和が電話口で少し興奮気味に話した。

『え、マジ……?』

これまで撮ってきた自分の写真が一冊の作品集となって世に出るという事実に、圭司はうれしさのあまり電話口で言葉を失った。

協業者にフレデリックの名が挙がっていたことが、企画を通す大きな決め手になった。
それだけでなく、出版にあわせて計画している個展には、ファッションスポットの一等地にあるフレデリック・ミシェル東京店を個展会場に提供したいと、フレデリック本人が申し出たのだった。
彼はもともと芸術家とのコラボレーションに意欲的で、写真芸術とファッションの融合が新しいインスピレーションをもたらしてくれるはずだと、今回の企画に気焔(きえん)をあげているという。


 
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