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星と僕たちのあいだに
第11章 夏の終わりに
『ああいうことが
きっかけになるなんてね。
世の中、まだまだ
すてたもんじゃないわね』
『ほんとだな。
俺はこの一年で、
いろんなことを思い知らされたよ。
出会いの不思議だよなぁ。
他人との出会いが
人を幸せにも不幸にもするんだ。
そのどれもが
俺には偶然とは思えなくてさ。
なるようになるんじゃないだ。
最善を望む気持ちが
偶然も必然に変えるんだって、
そう学んだよ』
圭司は、そう言った。
なるようになるんじゃない――――。
身をかわしあったあの夜以来、早苗を支えてきた、その言葉が圭司の口から出たとき、稲妻のような衝動が早苗の体の中をつらぬいた。
圭司と出会ってから今日までの想いが、いちどきに胸の奥からふきこぼれた。
『……あたしたちは?』
手元から圭司へ視線を据えなおして、早苗は、問うた。
『あたしたちの出逢いは、
必然に変えることができる?』
一途に見据える早苗の眼に光るものがあった。
微笑みはふるえ、あと何かひとことでも言えば崩れてしまいそうだった。
『早苗……』
火ぶくれのように触れることすらせず、正対すれば互いに目をそらしてきた。
思い違い、取り違え、行き違ってきた。
もういいじゃないか―――。
圭司の胸に、そんな言葉が強く迫った。
圭司は早苗の手をとり、強くひいた。
よろめいた早苗は、歯車がかみ合うように圭司へ細い体をすべらせた。
圭司の体温が伝わってくる。
そのぬくもりが早苗に勇気を与えた。
『ずっと……、
ずっと好きだったの』
やっと、言えた―――。
西側の高窓から差しこんだ夕陽が、早苗のまぶたの中を柑子(こうじ)色に染めた。