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星と僕たちのあいだに
第2章 優しい場所
 


圭司は風呂から上がったあと、キッチンにいた麻衣に声をかけた。

『何してるの?』

『朝食の準備です』

麻衣は土鍋をコンロに置いて、水を加減していた。

『朝は、ごはんでいいですよね』

『いや、そりゃなんでも……。
 あのさ麻衣ちゃん。
 有休、週末まであるんだったよね』

『はい、未消化のをまとめたんで、
 今週は出勤しません』

『あのね、俺、明日出張なんだ。
 一泊で。
 少年サッカーの大会でね、
 全試合の写真を撮るんだ。
 ここの家主の紹介で
 大会の公式カメラマンなんだよ』

麻衣はタオルで手をふいて、圭司に身体を向けた。

『じゃ、私お留守番ですね』

『いや、それでなんだけど、
 一緒に行かないか?』

え? という顔をして麻衣は自分を指さした。
あどけないといっていい麻衣のしぐさに愛嬌を感じ、圭司も麻衣を指さしてうなずいた。

『小屋の工事はあさってだし、
 それまで荷ほどきもできないだろ。
 いや、何か予定してたんなら
 いいんだけど……』

誘ったとたん気恥ずかしさが込みあげた圭司は、それをごまかすために微妙な角度にうつむいて耳のウラをかいた。

『私に手伝えることが
 あるんでしたら、
 行きたいです……』

麻衣は遠慮がちに力のない視線を圭司へむけながら、行きたいと答えた理由を自分の中に探していた。
おそらくそれは、昼間にスーパーマーケットで感じた「一目惚れの、その次」なるものが返事させたのだと思った。

『手伝うも何も、
 一緒に来てくれるだけでいいんだ。
 マップで見ると山の中なんだけど、
 空気がきれいでイイとこみたい
 だだっ広くて、それで……』

田舎の観光大使のような圭司の説明に、麻衣はコクンコクンと何度もうなずいて、“圭司さんについていく”と意思表示した。



 
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