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星と僕たちのあいだに
第3章 星のすぐそばに
麻衣の携帯が鳴った。
早苗からだった。
《ちょっと麻衣ちゃんっ!》
通話ボタンを押すなり、早苗の大きな声がとなりにいる圭司にもよく聞こえた。
ごく本能的に車内の二人は目を合わせた。
『は、はい』
《もう、嬉しすぎて、
泣いちゃったじゃないの!》
『え? なにがです?』
《朝ごはんよぉ》
ああ、と麻衣は胸をなで下ろした。
《起きてビックリしたの。
こんなにしてくれて、
旅館に泊まったみたいよ》
『それで、
わざわざ電話くださったんですか』
《そうよ、だって嬉しかったのよ。
帰ったらあたしにも教えてね。
からきしダメなの、料理》
わかりました、と麻衣はクスクス笑う。
渡瀬が電話口に出ると、麻衣をこれからシェフと呼ぶと言い、朝のほどこしに感謝を伝えていた。
電話を切った麻衣に圭司が聞いた。
『みんな喜んでたろ?』
『はい、とても。
早苗さん泣いちゃったって』
『あいつらしいよ』
『渡瀬さんは、神の使いだって、
言ってました』
『キザなんだよぁ』
『大げさですよね』
ふふっと麻衣は首をすくめて笑った。
キザな奴だと渡瀬を揶揄(やゆ)したが、渡瀬の言ったことはあながち間違いではないのだと、圭司は思いはじめている。