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星と僕たちのあいだに
第3章 星のすぐそばに
暗闇の中、圭司は腰をかがめたまま四畳間に戻り、
『朝は俺が起こすよ。
今朝も早かったから、
夜更かししないようにね』
と襖を引いた。
閉じた襖のむこうから『はい』と、麻衣の小さな返事が聞こえた。
蒲団にころがり、胸に手をあて、よくぞこらえた! と圭司は自分をほめた。
鼓動が胸を上下させ、あてた手のひらまでもが動悸にふるえている。
いま自分が麻衣を抱くことは卑怯だ、と自分の中の男をなじった。
どん底を這っていた麻衣に星くずの夜空を見せて身体に触れるなど、札束で女の頬を叩くのと大きな違いはない。
麻衣には時間が必要だ。
今は気張って明るくふるまってはいるが、麻衣は心の中の闇と戦っているのだ。
いっときの気迷いで麻衣を複雑にしてしまっては、自分たちの出会いを後悔することになるだろう。
自分には責任があるのだから――――。
圭司は、口をすぼめて長い息を吐いた。
圭司が襖を閉めたあと、麻衣は窓を閉めた。
ひろい和室の真ん中に敷いた蒲団にくるまって、ポツンとひとり天井を見、襖の向こうの圭司を想った。
星空に二人で手を伸ばしたとき、圭司とここにいることに「幸運」を感じた。
圭司に愛されたいと強く思った。
そして襖を閉めた圭司が、ほんの少しだけ憎らしくもあった。
アパートでひとり過ごした夜よりも、
ここの蒲団に一人でいることのほうがさみしい。
はすっぱな女だと思われても、圭司に抱かれて眠りたい。
そっと寝返りをうって、間仕切りの襖を見つめた。
襖のむこうに聞こえる布ずれの音にじっと耳を澄ませた。
麻衣はもう、はっきりと自分の気持ちがわかっていた。
――――圭司が好き。