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星と僕たちのあいだに
第3章 星のすぐそばに
けれども、圭司が子供の産めない私を選ぶわけがない。
もし万が一、ふたりに愛が芽生えたとしても、それが叶えば圭司は不幸をつかむ。
半年前の検査結果がもたらした失望は、私を孤独にした。
四隅をとられたオセロゲームのようにすべてのものが表情を変え、愛だと思っていたものは容赦なくその本性を見せた。
私には女として選択される決定的な理由が欠落している。
どうして私は女に生まれてきたのだろう。
子を宿せない私を、神様はなぜ女として生かすのだろう。
女として愛される理由を奪っておいて、女として生きてゆけというのは、あまりにむごい仕打ちではないか。
私は神様の失敗作なのか……。
相手の子を宿せない私は、相手を幸せにできない女だ。
どれだけ人を好きになろうと、その先には負い目がからみついた現実が待ちうけている。
――――(絶望って、こういうことなんだ……)
いっぺんに胸がせきあげ、涙が溜まった。
前の男に別れを告げられたときとは比べ物にならない、はるかに深い絶望感が麻衣の心に居座った。
麻衣は息をこらえ、気づかれないようにそっと身体を起こすと、湿ったタオルで涙をふき取り、鼻の頭をおさえながら、しばらくのあいだ暗がりの和室の隅に正座していた。
はな水をすすれば、きっと圭司はそれに気づいて私をなぐさめるに違いない。
こんなことで圭司をわずらわせたくない。
長距離を運転し、仕事で疲れた圭司を少しでも休ませたい。
息を落ちつかせた麻衣は、蒲団に入る前にもういちど星空が見たくなった。
畳をきしませないようそっと窓に近づいて、ほんの数センチずつゆっくりとガラス戸をひいてゆく。
宝石箱をあけたように、またたく星が麻衣の眼になだれこんできた。
――――(きれいだな……)
物音まで吸いとってしまいそうな美しい星空。
誘い出されるように窓からそっと顔を出すと、ふと、となりの窓に人影を感じた。
圭司が身を乗り出して星空を眺めていた。