この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
星と僕たちのあいだに
第4章 幸福の在りか
 
何か思いついたように体を起こした圭司が、ノートPCを起動して麻衣に手をさしのべた。

『おいで、見てごらん』

麻衣が寄り添うと、圭司は「LIFE」と名前のついたフォルダをクリックした。
フォルダには、圭司がこれまでパーソナルワークで撮りつづけてきた老人たちの画像をおさめてある。

『スライドショーのほうがいいかな』

老人たちが次々と画面に浮かんでは消えていく。
前歯の欠けたシワだらけの笑顔、ボロぞうきんのような肌、くの字に曲がった体で農道をゆく老婆。

老人たちの過ごしてきた膨大な時間、語り尽くせぬ過去が、圭司の切り取った深い陰影のなかに息づいている。

『この人たちにも
 いろんなことあったんだろうな。
 死にたいくらい嫌なことも
 あったかもしれない。
 あ、このお婆さんは
 戦争で子供亡くしたって言ってた。

 でも杖ついて毎日、畑見にいくんだ。
 これからも死ぬまで毎日いくって。

 なぁ麻衣、
 次の命を創ることだけが人の役目なら、
 この人たちはとっくの昔に
 消えてなくなってるよ』

圭司は、麻衣の肩をだいて満天の星を見上げた。
そこには喜びも悲しみもない。
あるのは悠久の時間と普遍の原理だけである。

『この世界は、
 人の想像なんて及びもつかない、
 壮大な調和の上に成り立ってる。
 不思議なことが起こったとしても、
 人間がその原理を
 まだ知らないだけなんだよ。

 子孫を残すことだけが自然の原理なら、
 次の命をつくれない麻衣は、
 この世に生まれてこないはずなんだ。
 原理に反するし、理屈があわない。

 なぜ麻衣が生まれてきたのか、
 麻衣はわからないんだよな?
 麻衣が生きているあいだに
 答えは見つからないかもしれない。

 でもさ、さっき
 麻衣は俺を幸せにしてくれたよ。
 俺にはそれが、
 麻衣が生まれた理由になる。

 だから、俺、
 出会えて嬉しいって、
 言ったんだ』



 
/381ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ