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星と僕たちのあいだに
第4章 幸福の在りか
朝食前に体を流したいと、着替えを抱いて浴場へ行く麻衣を見送って、圭司は機材をワゴンに積み込んだ。
それから部屋に戻って麻衣を待つあいだ、せまい和室に敷かれたままの蒲団をながめ、麻衣の肢体を反芻(はんすう)した。
なまめかしい感覚がよみがえり、できることなら際限なく麻衣を抱きたいと思った。
そんなふうに思う自分を、思慮の浅い男だなと自嘲して、自分の立場を嘆いた。
夜の闇がもたらした甘美なゆるみは、詩的にも、情熱的にも、感傷的にも、いっとき俺を変えたが、星空を見て調子づいたところで現実はきのうの朝と何も変わっていない。
なにをいっても俺は、売れない貧乏カメラマンのままだ……。
女と溶けあった翌朝に仕事があるというのは、今の圭司にはちょっとした皮肉だった。
その日は前日の勝ち残りチームがトーナメントを戦うことになっていて、昼過ぎの決勝戦では、県代表の強豪を破ったあの無名チームが栄冠を勝ち獲った。
表彰式を撮り終えて撮影スケジュールをこなした圭司は、最後のアップロードを済ませて競技場をあとにした。
来たときと同じように麻衣は車に揺られるとすぐに眠り、倉庫に到着する直前まで目を覚まさなかった。
途中、麻衣の小屋を工事している洋介から、『内装仕上げを残して今日中に終わる』と連絡があった。
圭司は、渡瀬からの連絡がないことが気にかかっていた。
早苗とのことがどうなったのか判らないまま倉庫へ帰ることに、若干の不安がある。
麻衣と出来上がった自分が帰ってから二人にどう接するか、これからの共同生活をどう過ごしていくか、いつまでも考えがまとまらないでいた。