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星と僕たちのあいだに
第5章 それぞれの枕辺

何度も愛しあったふたりが互いの体を離すことができたのは、その日の昼過ぎだった。
身をちぎるような思いで起きあがった圭司に、毛布で胸をかくした麻衣が『今日はおしまい?』と、べそをかくような顔でくちびるを尖らせたあと、にっこりと笑った。
『もうコーヒーって感じじゃないな』
『おなか、すいたでしょ?』
麻衣は圭司のダンガリーシャツを素肌に羽織り、無理に胸ボタンをかけてくるっとまわった。
『どう?』
腰に手をあてて胸を張る麻衣は、大人のシャツを着た子供のようだった。
豊満な胸につきあげられて、ボタンホールが悲鳴をあげるみたいに口を広げている。
―――(それにしても大きなおっぱいだな)
麻衣の体を自由にできる自分は、やはり幸せ者なのだと圭司は思った。
『いい眺めだよ』
圭司がうなずくと、麻衣はおどけた顔でパツンと張らせた胸をゆすり、愛嬌たっぷりに、ふふんと微笑んで、
『チャーハン作ったげる』
と、誇らしげにアゴをあげて言い、わざとらしく尻を振りなびかせて小屋から出ていった。
それはどうやら麻衣なりのモンローウォークらしく、圭司はうなだれて笑った。
『尻から風邪ひくよ』
ストーブはついたままだったもののシャツ一枚では肌寒いだろうと、圭司は、あちこちでたらめに散らばった麻衣の服を寄せて束につかんだ。
『電話、鳴ってるんじゃない?』
麻衣に言われて小屋を出ると、かすかな携帯電話の音が圭司にも聞こえた。
ゆうべから撮影ブースに置いたままだったことを思い出して、ブースへ急いだ。
麻衣に服を着るように言い、ずいぶん長く鳴りつづけた電話をとると、声の主は早苗だった。
《もしもし? 圭ちゃん?》
気負いたったような、せいた心情を隠さない声である。
『ん? どうした?』
《今すぐ、スタジオに来れる?》
『すぐ?』
《うん、すぐ》
圭司は、早苗に何か困りごとが起きたのを察知した。

