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星と僕たちのあいだに
第5章 それぞれの枕辺
 
三脚をたたむ圭司の所へ早苗がやってくる。
壁際の男はチラチラと圭司を見たが、視線が合いそうになると所在なげに目をそらした。

『圭ちゃん、今日はごめんね。
 ホントに助かった』

その言葉が空世辞(からせじ)でないことは、早苗の表情に見てとれる。

『いいよ。おたがいさまだ。
 それより、早苗、
 疲れてるんじゃないか?』

心配させまいと笑おうとしたのがうまくいかず、早苗は無言で目をふせて、キュッと口を結んだ。

『壁際のヤツ、そうなのか?』

早苗はうつむいたまま、小さく二、三度うなずいた。

『だよな……。
 ま、いいや。 
 今からどうするんだ。
 俺と一緒に帰るか?
 きょうは寒いし、
 四人で鍋なんていいじゃん』

髪をかき上げた早苗の表情にいつもの冴えがない。
自慢の美しい眉は力なく垂れ、圭司には早苗が何を言おうか迷っているようにみえた。

無理にでも連れ帰りたい気持ちを、圭司は、ぐっと抑えた。
帰るぞ、の一言で、早苗を男の元から引きはがす自信はあった。
だが、渡瀬が「待つ」と言った以上、早苗のことを決めるのは早苗自身なのだ。
いかように結論が出されたとしても、周囲はそれを受け入れてやらねばならない。

『わかった。
 先に帰ってるよ。
 仕事、無理するなよ』

圭司の笑顔に、早苗への思いやりがにじみでた。

『ありがと、だいじょうぶ。
 気をつけて帰ってね』

何かを振りきるように前髪を払った早苗の顔に、気弱な笑みが浮かんでいた。
圭司は、壁際でゴルフのシャドースィングをする中年男性を早苗の肩越しに睨み、舌打ちしたい気分で機材ケースを肩にさげた。


 
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