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隷従超鋼ヴァギナス [2] 調教編
第1章 月神太陽
(あっ……スーツ……)

 自分もまた、身体に密着する薄手のジャンプスーツのままだったことに思い至り、焦る。上にはユリカが貸してくれたジャケットを羽織ってはいるが、突如現れた男性を前にして自分がまるで裸ででもいるかのような気分になり、耳の裏がカッと火照った。

「君には助けられたお礼をしなくちゃと思っていたんだ。ボクは月神太陽。お月様の月に神様の神で、ツキガミ。今はヴァギナス・ユピテルのパイロットだ。ありがとう、そしてよろしく!」

 そう言って月神と名乗った青年が手を差し出す。その手に応えようと自分も手を差し出そうとするが、インナー着用を禁じられているジャンプスーツの下で乳房が揺れるのを感じ慌てて引込める。引込めたはずみにまたぶるんっと震動を感じる。

(はわわわっ……んもうっ、なによこのダメスーツ!)

 もっとちゃんとした格好をしていれば良かった。後悔先に立たず。

「……?」

 笑顔の眉をヒョイと額にあげて太陽が瞬きしてみせる。その手は差し出されたままだ。

「あっ……アハハ! よっ、よろしくお願いします。す……素敵なお名前ですね!」

 慌ててもう一度手を差出し、ドギマギしながら太陽の手を握る。

(ああーん……なんなのこれぇ! カッコつかないじゃない……)

 太陽の手がしっかりと握り返してくると、その思わぬ力強さにいっそうぽうっとなってしまう。

「名前なら〝銀河ケイ″だっていい名前だよね。スケールでっかいなあ」
「そっ、そんな大層なものじゃ! 天文マニアのお父さんが駄洒落でつけたようなものでしてっ……」

 完全に泥沼にハマッていた。もうどうやっても格好良い方向への軌道修正は無理と思われる。脳内に舞い降りた意地悪顔の天使が、両腕をクロスして巨大なバッテンをつくる。

「いやあ、センスあるよ、君のお父さん!」
「ハハハ……」苦笑がこぼれる。
「……ありがとうございます」

 と、頭を描きながら取り繕ってようやく、お礼を言うならもっと別の大事なことがあったことに気づいた。

「ああっ! あのっ……私こそ……あのとき私と妹を助けて下さってありがとうございます! なんとお礼を言っていいのか……」

(これよっ! これを一番最初に言わなきゃダメでしょ、私の馬鹿ッ!)
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