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隷従超鋼ヴァギナス [3] 浸蝕編
第6章 崩壊
「ケイ……」

 上昇していくハンガーリフトを見送って、一人、立ち尽くすユリカ。その精神力はそろそろ限界となっていた。

 自分でもどういう原理かはわからないが、おそらく植えつけられ、全身に繁殖してしまったパラサイトメタルの影響だろう、侵入してきたムカデ型の淫機獣たちをどうにか操ることができたが、それもこれまでらしい。

(でも、これでいい……。少なくとも……彼女たちを逃がすことができた。もう、失うものは……)

 バヂイッ!

 首筋に当てられたスタンガンの一撃。

 強烈な電撃によって、どうと床に倒れたユリカの背後には天寺が立っていた。

 ユリカによって動きを抑えられていたムカデたちがたちどころに天寺を取り囲む。その体を繋ぎ合わせ、まるで一体の巨大な獣のようだ。

「群体生物に寄生したか。なるほど、侵入制圧には合理的な宿主の選択だ。……だが」

 動じることなくその拳を一閃させ、壁についた非常用のガラスプレートを叩き割る。中から飛び出したガスマスクを天寺が着用するのとほぼ同時に、ハンガー外部の廊下に薄紫色の気体が噴出する。

――非常警報。全館に弛緩ガスを放出。館内の人員は直ちに備え付けのマスクを着用して下さい。繰り返します。非常警報。全館に弛緩ガスを放出……

 自動警報のアナウンスが響き渡る。

 パラサイトメタルに寄生された異星のムカデたちが動きを鈍らせ、天寺の足もとでヒクヒクと黒い腹を上にして痙攣する。

「……所詮、宿主本体は生物。その動きの自由を奪うのは難しい事ではない。フ、フフ……あとは地上からこいつらを送り込んで来ている奴さえ仕留めれば良いというわけだ。ハッ! フハハッ!」

 いつもと変わらぬ不敵な笑い声。そして、叫ぶ。

「行くがいい銀河ケイ! 最後の出撃だ! 人類最後の戦いが……今、始まるのだ!」
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