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母娘
第1章  
ひときわ大きな声を上げた。
でも、誰に聞かれる心配もなかった。
母屋には二人しかいなかった。
離れに義祖母がいるが、この部屋からは大分距離がある。
そこにはトイレも浴室も付いている。
通常、義祖母は離れから食事のとき以外は出ない。
窓も開けっ放しだが、隣家は百メートルも先だ。
鈴花の実家は、大通りから小道を登った斜面を切り開いた土地に建っていた。
広大な敷地だ。
その周りの斜面には太い杉が密集して立ち並び、山の奥まで広がっていた。
そこに建つ家は、屋敷といってもいいかもしれない。
古い重厚な造りの日本家屋だ。
ただ当主はいない。
多分今は、義祖母がそれだろう。
鈴花の家は代々大地主だ。
方々に土地を持ち、方々に貸している。
このここ一帯の山林もこの家のものだ。
中には老舗のデパートが建っている土地もあるという。
そして何の因果か、代々女系の家系なのだ。
もう百年以上も男子が生まれていない。
だから代々女当主らは婿養子をとっている。
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