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パラダイスパレスの淫らな晩餐
第1章 奇妙な豪華ホテル
 次々にテーブルに運ばれてくる料理をマナーもへったくれもなくガツガツと貪るキオと、王宮仕込みの完璧な作法で食するエヌフィーヌ。

 メニューはどれも珍しく、それでいて口に合う味付けで、携帯食に飽きていた事もあり二人の食は進んだ。

「あ~あ! ウマかった! でもこれが最後のひと口と思うと惜しいなあ」

 デザートのプディングの最後の切れ端を名残惜しそうにスプーンの先でつつくキオをエヌフィーヌがたしなめる。

「意地汚いことを言わないの! また泊まればいいじゃない」
「でもよ~、五百万ゴールドすんだぜ」

「あら、そんなのこの先の遺跡の財宝を持って帰ればお釣りがどっさりくるわ。他のエクスプローラーがここに立ち寄るっていうのも納得よね」

「まあ、そーだけどさあ……あっそうだ! なら、もう一泊してもいんじゃね? そしたら……」

「それはさすがに本末転倒でしょ! 私たちの目的はリゾートじゃなくて、あくまでもトレジャーハントよ」

「ええ~! いや、そーだけど……」

 そんなやりとりをしているふたりの所に、執事が戻ってきた。

「いかがでごさいましたでしょうか?」
「いやあ、最高だよ! この料理作った人、天才! たらふく食ったぜ!」
「それは、それは……」

 キオの感激の言葉に微笑む執事。

「とても素敵なお料理でしたわ。美味しいだけじゃなくて、品もあって……こんな人里離れた場所で口にできるなんて思いもしない味でしたわ。いえ、王都ですら口にできるかどうか……。このホテルは確かに冒険者にとってのパラダイスですわね」

「それは最高の褒め言葉ですな。この料理を作ったのは当ホテルのオーナーですが、大変喜ぶでしょう」

「あら、オーナー自ら腕をお振るい下さったの?」

「はい。元々オーナーは料理人でして。当ホテルを始めてからも、料理長として厨房の事はすべて差配しております」

「へえええ、世の中色んな人がいるもんだなあ……」

「じゃあ……もし良かったら、ご挨拶させて頂けますか? 直接お礼を申し上げたくて」
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