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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第1章 ―美荻野凛々香の日常―
《音声は変えてあります》
画面下に小さなテロップ。被せて、インタビュウに応じる甲高い声。
「最初は……軽い気持ちでしたね。面白がって、友達とふざけ合ったり。それが、だんだんエスカレートしたっていうか――」
若い男性の口元だけを映した映像が切り替わり、下半身にモザイクのかかった裸の男が街を歩くシーンとなる。白昼の商店街、人通りはあるが誰も男には目もくれない。男は傍らの飲食店に入ると、無造作にレジスターを開け、中から現金を掴み出す。
店内の他の客も、従業員すらも、全く気付いていない。ニヤリと笑う男の顔のアップに被せて、再び音声が入る。
「――自分が、そういうことをする人間だったなんて、思ったこともありませんでした。透明にさえならなければこんなことにはならなかったと……」
それに合わせて画面にコピー。
STOP! 透明犯罪。
STOP! 透明ドラッグ。
薬は社会と、あなたの心をむしばみます。
――警視庁
VTRはそこで終わり、課長が会議室に集まった面々に水を向ける。
「今度流される10秒間のTVスポット公共広告だが……どうかね? 皆、気づいたことがあれば言ってくれたまえ。修正要望として制作会社に提出するから」
集まっているのは警視庁透明犯罪捜査課のメンバーたちであった。
画面下に小さなテロップ。被せて、インタビュウに応じる甲高い声。
「最初は……軽い気持ちでしたね。面白がって、友達とふざけ合ったり。それが、だんだんエスカレートしたっていうか――」
若い男性の口元だけを映した映像が切り替わり、下半身にモザイクのかかった裸の男が街を歩くシーンとなる。白昼の商店街、人通りはあるが誰も男には目もくれない。男は傍らの飲食店に入ると、無造作にレジスターを開け、中から現金を掴み出す。
店内の他の客も、従業員すらも、全く気付いていない。ニヤリと笑う男の顔のアップに被せて、再び音声が入る。
「――自分が、そういうことをする人間だったなんて、思ったこともありませんでした。透明にさえならなければこんなことにはならなかったと……」
それに合わせて画面にコピー。
STOP! 透明犯罪。
STOP! 透明ドラッグ。
薬は社会と、あなたの心をむしばみます。
――警視庁
VTRはそこで終わり、課長が会議室に集まった面々に水を向ける。
「今度流される10秒間のTVスポット公共広告だが……どうかね? 皆、気づいたことがあれば言ってくれたまえ。修正要望として制作会社に提出するから」
集まっているのは警視庁透明犯罪捜査課のメンバーたちであった。