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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第5章 ―美荻野凛々香の非日常―
「昨日の夜はどこへ行っていたの? 心配したんだから……連絡ぐらいくれたっていいのに」

「ごめん。ちょっと一人きりになりたかったんだ」

「ねえ、それってやっぱり何か悩み事? 最近の瑠偉人、ちょっとおかしいよ」

「悩みっていうほどのものじゃ……ホラ、あるだろ? 漠然とした不安っていうか……このままでいいのかな、みたいなモヤモヤした感じ。上手く言えないけどさ。でも、もう大丈夫だよ! ひと晩グダグダになるまで飲んだら、どうでも良くなった……」

 凛々香の部屋。居間のソファのいつもの位置に腰かけた瑠偉人。そういっていったん言葉を区切り、笑顔をつくってみせる。

「……吹っ切れたよ」

 凛々香は退勤時間直前から瑠偉人に張り付いて、半ば無理やり自宅まで連れて来たのだ。

(このままでいいのかなって……私たちの関係のことかしら? 吹っ切れたって……何が?)

 そんな思いが脳裏によぎる。だが、言葉にしてしまうのは少し怖い。

(ダメね、私。瑠偉人には何でも話してって言ったくせに……)

 自分にも関りがあることとなると、腰が引けてしまう。尋ねてもし、良くない答えが返ってきたらどうすればいいのかわからない。凛々香は瑠偉人を失いたくなかった。

 躊躇って無言となった凛々香を瑠偉人がじっと見つめる。逆に凛々香を気遣うような優しい目。

(ああ……瑠偉人! やっぱり聞けない……私、瑠偉人にずっとこうやって見つめていてほしいもの……)

 瑠偉人の手が、隣の凛々香の手にそっと重ねられた。

「ねえ……凛々香。お願いがあるんだけど」
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