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透明犯罪捜査官 美荻野凛々香の非日常
第5章 ―美荻野凛々香の非日常―
「……すいません先生、お待たせしまして。お水をお持ちしました」
お盆を持った担当が扉を開けて入ってきた。瞬間、盆の上の水のつがれた紙コップが、酒倉目掛けて弾け飛ぶ。
バシャアアアッ!
「なにさらすんじゃ、コラアッ!」
「すっ、すいません! すぐに拭くものを……」
「もうええわ! 帰らしてもらうで!」
酒倉の怒声が取調室に響いた。
透明な瑠偉人が咄嗟にお盆の上から飲料を払ったとは知る由もなく、気の毒な担当者は平謝りする他なかった。
ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……
警察署の玄関脇の木立の陰に、二人分の息切れ。瑠偉人と凛々香だった。
「あ、危ねえ~……ヤバかった……」
「ヤバかったじゃないでしょ! 本当にやめて欲しかったのに!」
「ごめん、ごめん! でも滅茶苦茶感じただろ、凛々香?」
「そ、それは……」
口に出して認めるのは躊躇われるが、あれは確かに今までにないほどのオーガズムだった。しかし、いくら気持ち良かったとはいえ、もう二度とあんな思いはしたくなかった。
「……知らない! 瑠偉人の馬鹿! あんなことするんだったら、私もう透明になんかならない! ……ううん、そうじゃなくても……もうこれで終りにしましょう。ちょっとやり過ぎよ……私たち」
署の前は車道に面した人通りの多い往来だ。喧騒に紛れて凛々香の怒気を含んだ声も道行く人たちの耳には届かない。
凛々香は本気だった。けじめをつけなければならない。この先は本当に取り返しのつかない事になる、先ほどの体験でつくづくそう思った。
「……わかったよ、凛々香。俺が悪かったんだ」
瑠偉人の聞き分けの良い返事に、凛々香の胸がすうっと軽くなる。
「じゃあ……」
「ああ、これで最後にする。透明ドラッグはやめ。もう使わない」
「本当! 嬉しい……」
お盆を持った担当が扉を開けて入ってきた。瞬間、盆の上の水のつがれた紙コップが、酒倉目掛けて弾け飛ぶ。
バシャアアアッ!
「なにさらすんじゃ、コラアッ!」
「すっ、すいません! すぐに拭くものを……」
「もうええわ! 帰らしてもらうで!」
酒倉の怒声が取調室に響いた。
透明な瑠偉人が咄嗟にお盆の上から飲料を払ったとは知る由もなく、気の毒な担当者は平謝りする他なかった。
ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……
警察署の玄関脇の木立の陰に、二人分の息切れ。瑠偉人と凛々香だった。
「あ、危ねえ~……ヤバかった……」
「ヤバかったじゃないでしょ! 本当にやめて欲しかったのに!」
「ごめん、ごめん! でも滅茶苦茶感じただろ、凛々香?」
「そ、それは……」
口に出して認めるのは躊躇われるが、あれは確かに今までにないほどのオーガズムだった。しかし、いくら気持ち良かったとはいえ、もう二度とあんな思いはしたくなかった。
「……知らない! 瑠偉人の馬鹿! あんなことするんだったら、私もう透明になんかならない! ……ううん、そうじゃなくても……もうこれで終りにしましょう。ちょっとやり過ぎよ……私たち」
署の前は車道に面した人通りの多い往来だ。喧騒に紛れて凛々香の怒気を含んだ声も道行く人たちの耳には届かない。
凛々香は本気だった。けじめをつけなければならない。この先は本当に取り返しのつかない事になる、先ほどの体験でつくづくそう思った。
「……わかったよ、凛々香。俺が悪かったんだ」
瑠偉人の聞き分けの良い返事に、凛々香の胸がすうっと軽くなる。
「じゃあ……」
「ああ、これで最後にする。透明ドラッグはやめ。もう使わない」
「本当! 嬉しい……」