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愛玩男奴 お兄ちゃん
第5章 こんなの嫌だ……
 こんなの嫌だ……耐えられない!

「あ……ああああああ……あああっ! もうやめて下さい! 玲子さん……私、私……耐えられない! ああああ……」

 叫び声を止めることはできなかった。溢れる涙も。

「つぐみ!」

 お兄ちゃんが私に駆け寄ろうとして、玲子さんに鎖を引かれて止められる。玲子さんは全く動じた様子もなく、落ち着いてお兄ちゃんの鎖を壁につなぐと、ツカツカと私に歩み寄った。

「あなたは調教師失格ね。少し頭を冷やしてもらう必要があるわ」

 そして、私を部屋の外に出す。

「ごめんなさい! ごめんなさいっ! 玲子さん……でもっ!」

「つぐみっ! つぐみっ!」

 お兄ちゃんの呼ぶ声は、完全防音の扉が閉じられるとまったく聞こえなくなった。

 薄暗い地下の廊下。玲子さんはすぐ隣の部屋の扉の鍵を開け、その暗闇の中へ私を放り込んだ。

「きゃあっ!」

「お兄ちゃんの調教が終るまでそこにいなさい」

 扉が閉まる。完全な闇の中に私はひとり残される。

「あ……ああ……」

 どうしよう。

 調教師失格。玲子さんの言葉が胸に刺さる。私は追い出されてしまうのだろうか。でも、あんなこと、私には耐えられなかった。本当だ、私、ここにいる資格なんかない。玲子さんの助けにも、お兄ちゃんの助けにもならない。

 そう思うと、また涙がでてきた。お兄ちゃんのために流す涙じゃなくて、自分自身のために流れる私の涙。

「ごしゅじんさま……?」

 突然、暗闇の中から声がして、私の心臓が止まりそうになる。

「……泣いてる?」

 男の子の声だった。
 まだあどけない感じの、囁くような小さな声。
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