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愛玩男奴 お兄ちゃん
第1章 男奴の館
「生前、お父様は私に契約書を下さいました。返済できなかったときには担保としてあなたを私に譲渡すると」

 そう言って玲子さんはバッグから一枚の契約書を取りだしてテーブルに広げて見せた。

「……!」

 私も、お兄ちゃんも声が出なかった。思いがけないことに、ただただ目を見開いて、契約書に担保として大きく書かれたお兄ちゃんの名前を見つめることしかできなかった。

「早合点しないでね」

 すかさず玲子さんが言う。

「……これを見せたのは、だからあなたを男奴にするために貰い受けに来た、というわけではないの」

「だ、んど?」

 お兄ちゃんも私も、聞き慣れない言葉にきょとんとする。

「ああ、ごめんなさい。私の扱う、調教した男の子のことをそう呼んでいるの」

 さらりと説明されると、本当にそんな存在がこの社会にはあるのだということが感じられて少し不気味だった。

「そうではなくて、貴方たちのお父様が、これぐらい真剣に自分の研究を信じていらっしゃったということを伝えたくて、私は来たの。実の息子を担保にできるぐらい、必ず成果が実ると確信してらしたわ、教授は」

 玲子さんがじっと私たちの顔を見つめる。

「そして先ほど言ったように、私は担保を受け取る気はありません。ろくに取材もせずに……いいえ、取材をしてちゃんとした研究だということはわかっていたはずなのに、視聴率稼ぎに走ったマスコミや、煽られるがままに好き勝手を言った世間の無責任な人々に、貴方たちがどれほど傷つけられたかと思って。お父様の研究はデタラメなんかじゃなかったということだけ伝えたくて今日はお伺いしたの」
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