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愛玩男奴 お兄ちゃん
第6章 させてください
「……させてください」

 それは本当の意志だ。男奴というものを実際にこの目で見て、お兄ちゃんが調教される姿を経験した、私の本当の意志による決定だ。
 私も玲子さんのようにフェアでありたい。私たちを傷つけ、パパとママを奪った世の中とは違って、どんな事にだってちゃんとフェアに向き合いたい。

 お兄ちゃんにだって向き合わなくてはならない。例え、男奴となってしまったお兄ちゃんにだって。

 まっすぐに見つめ返す私の目を見て、玲子さんは微笑んだ。

「わかったわ。明日から、お兄ちゃんの世話はあなたよ。いいこと? 大目に見るのは今日まで。けじめがつけられないなら、今度はクビだからね」

「はい。ありがとうございます」

 お礼は、どこまでもフェアな玲子さんの態度に対してだった。

    ※    ※    ※

 次の日から私のお兄ちゃんに対する調教が始まった。

 調教と言ってもやはり見習いなので、大したことは出来ない。最初に玲子さんが言った通り、初めのうち、それはどちらかと言うと飼育と言った方が正確な内容だった。

 食事を与える。床に置いた皿から手を使わせずに直に食べさせる。裸体を拭いて清潔に保つ。お尻に体温計を刺して体調の管理もする。厩舎で飼う動物の様に、私はお兄ちゃんの世話をした。

 私は真面目に仕事をこなしたし、お兄ちゃんも従順だった。

 あの最初の日、私が部屋から追い出されてから玲子さんになんと言われたのか、それは遂に知ることが出来なかったけれど、きっとそのときお兄ちゃんは決めたんだ。私をひとりぼっちにさせないために、お兄ちゃんであることをきっぱりとやめるって。

 そして、私は一人になった。

 お兄ちゃんはもういない。いるのはただの男奴。

 ときどきやってくるお客さんの前で、玲子さんに命じられて痴態を披露する。どんなことでもやってみせる優秀なこの男奴はなかなかの評判だった。お客様を悦ばせ、お褒めの言葉を頂戴する。それが私の仕込んだ行為だったりすると、まるで自分が褒められたみたいに嬉しかった。
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