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愛玩男奴 お兄ちゃん
第1章 男奴の館
 その通りだ。玲子さんは私の気持ちを全部代弁してくれた。

 私はそんなふうに救ってもらっても全然嬉しくなんかない。どんなに辛くても良いからお兄ちゃんといっしょに支え合って生きていきたい。

「そ、それは……」

 でも、お兄ちゃんの言っていることもわかる。お兄ちゃんは一時の衝動や感情で行動する性格じゃない。もっと色々考える。きっと、今、お兄ちゃんは考えているんだ。働きに出ている間、私一人の所に今日来たような恐い人たちが押しかけてきたら誰が守るのかと。だから、自分の身を売ってでも全部の借金をチャラにしてしまうしかないと考えたんだ。

 お兄ちゃんが私のことを考えてくれなかったことなんか今まで一度だってない。そして、これからも。

 だから、私は心を決めた。

「玲子さん、私もお兄ちゃんと一緒に行きます」

「何を言っているの。私が調教するのは男の子だけで――」

「調教師として雇って下さい。私もお兄ちゃんと一緒に生きます」

「つぐみ! ダメだ、そんなこと!」

「お兄ちゃん! 今、玲子さんが言った通りだよ! 私だけ一人残って……そんなので幸せになんかなれるはずないじゃない! だからせめて……そばにいさせて」

「あなたたち……」

 私たち二人の言っていることは勝手すぎるとはわかっていた。玲子さんにしてみれば、お兄ちゃんを買うことも、私を雇うことも全く必要のないことだ。

 でも、玲子さんは最後にこう言ってくれた。

「……わかったわ。でも、もう一度、二人でよく話し合ってみて。三日後に丈を寄越すわ。ああ、私の運転手……あれが丈。それで、そのときにまだその気持ちが変わらないのなら、私の仕事場にいらっしゃい。いいこと、二人ともよ。どちらかの意見が違うのなら、私は受け入れません」

 時間をおいて頭を冷やせば、あるいはお互いに説得し合えば別の考えも浮かぶだろう、裏の世界に私たちを関わらせたくない玲子さんはそう考えたのかもしれない。

 でも、考えは変わらなかった。

 私も、お兄ちゃんも。
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