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愛玩男奴 お兄ちゃん
第1章 男奴の館
 三日後、迎えに来た丈さんの車に乗って、私たちは玲子さんの仕事場へとやって来ていた。

 都会から離れた、ひっそりとした山の中に建てられた洋館。

「ようこそ男奴の館へ。いかにもって感じで笑っちゃうでしょう。でもイメージ商売ってところもあるからね。本当は不便で仕方ないんだけれど、この方がお客様方にはウケがいいのよ」

 そう言って広間へ私たちを招き入れてくれた玲子さんは、もう私たちの選択に口を出すことはなかった。

「つぐみさん、そしてお兄ちゃん。私は貴方たちが自分で決めたことを尊重します。人間を調教する――それは間違いなく、人の尊厳を踏みにじる仕事よ。だからこそ私は、意思を持って為されたことを大切にしたいの」

「ありがとうございます」

 お兄ちゃんがお礼を言う。

「そして、これからつぐみさんは調教師見習い……うーん、それもまだ早いわね。そう、いいとこ飼育員というぐらいかしら……として働いてもらいます。従業員として私の指示に従う様に」

「……はい」

「お兄ちゃんの方は男奴。奴隷よ。わかっているわね。生半可なことではないわよ」

「……はい」

 お兄ちゃんも私と同じ、覚悟のこもった返事をする。
 玲子さんが手にした黒い色の枷を私たちに見せる。じゃらり、と枷に繋がった鎖が音を立てた。

「男奴にはこの手枷首枷をつけるわ。これが取り付けられた瞬間から、お兄ちゃん、あなたは性の愛玩具……男奴となるのよ」

 ああ、お兄ちゃん、お兄ちゃん! 今になって私は後悔の念を覚えた。もっと他に方法はなかったのだろうか。本当にこれで良かったんだろうか。

 そのとき、丈さんの声がした。

「玲子様、準備はできております……」

 その姿を見てわたしはあっと息を呑んだ。
 丈さんも、玲子さんが今手にしているのと同じ手枷首枷をつけていたのだ。
 私たちを連れてきてくれたときと同じスーツ姿。でも、その大きな拘束具が両の手と首を鎖で繋いでいた。

 驚く私に玲子さんが頷いてみせる。

「そうよ。丈も男奴なの……私のね。館の中では枷を繋げているわ」
 
 そして、その口から私の初仕事が告げられた。


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 →「丈を調教なさい」  3章へ(目次から移動)
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