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虹色の楽譜
第2章 橙
しばらくして大きな吐く息の音とともに
演奏が終了して奏くんの手が止まった。
「び、ビックリした」
やっとのことで声が出た私に、恥ずかしそうに笑うと
「今のは指の練習曲」
今ので、練習曲?
「今日弾く予定の曲を一通りさらうから待ってて」
そう言って、再び表情を変えると
一気に静かなトーンでバックミュージックへと転身した。
お客さんの会話の邪魔にならないように。
会話が途切れた時に、少しでもこの音が会話を続けるきっかけになるように。
静かに、優雅に音が鳴り響く。
そんな時間を気がつけば1時間も過ごしていて。
あと1時間もすれば開店の時間だと言うので
私は立ちあがって帰ろうとした。
「茜さん。最後に何か1曲、好きな曲を弾くよ」
そう言って優しく笑う顔は
今まで音を支配していたような演奏者ではなくて。
今日1日、私と過ごしたハタチの青年の顔だった。
「私、ピアノの曲なんか本当に何も知らないから」
演奏が終了して奏くんの手が止まった。
「び、ビックリした」
やっとのことで声が出た私に、恥ずかしそうに笑うと
「今のは指の練習曲」
今ので、練習曲?
「今日弾く予定の曲を一通りさらうから待ってて」
そう言って、再び表情を変えると
一気に静かなトーンでバックミュージックへと転身した。
お客さんの会話の邪魔にならないように。
会話が途切れた時に、少しでもこの音が会話を続けるきっかけになるように。
静かに、優雅に音が鳴り響く。
そんな時間を気がつけば1時間も過ごしていて。
あと1時間もすれば開店の時間だと言うので
私は立ちあがって帰ろうとした。
「茜さん。最後に何か1曲、好きな曲を弾くよ」
そう言って優しく笑う顔は
今まで音を支配していたような演奏者ではなくて。
今日1日、私と過ごしたハタチの青年の顔だった。
「私、ピアノの曲なんか本当に何も知らないから」