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虹色の楽譜
第4章 緑
その声を合図にスタジオ内が1時間後の録音に合わせて動き出した。
それからはあっという間の1時間で
私は一息も出来ないままに本番の時間になった。
「華やかにお願いします」
奏くんが中央のグランドピアノにゆっくりと座る。
いつも見慣れたように
ゆっくりと両手の中指にフッと息を吹きかけた。
おまじないみたいに。
まるで、幻のようだった。
いつものように、激しい練習曲でもなく
私に聴かせてくれる楽しい曲でもなく
静かなレストランのバックミュージックでもなく。
奏くんの紡ぎ出すクラシック調のピアノ曲が私を包み込んだ。
「綺麗」
音を綺麗と表現する事が、正しいのか分からないけど。
そう表現する事が何よりもしっくりする演奏だった。
「凄い。奏くん」
「村松さん」
「あ。柳下さん。このまま成功すると良いですね」
「小野寺、奏だよね。村松さんと知り合いだったなんて驚いたよ」
「奏くんを、ご存じなんですか?」
「ああ・・・・」
そう言ったまま、柳下さんはお茶を一口飲んだ。
「昔、知ってた。
小野寺がコンクールに出て来た時、すごいと思ったよ」
「・・・・って。柳下さんピアノをやってたんですか?」
意外だ。
それからはあっという間の1時間で
私は一息も出来ないままに本番の時間になった。
「華やかにお願いします」
奏くんが中央のグランドピアノにゆっくりと座る。
いつも見慣れたように
ゆっくりと両手の中指にフッと息を吹きかけた。
おまじないみたいに。
まるで、幻のようだった。
いつものように、激しい練習曲でもなく
私に聴かせてくれる楽しい曲でもなく
静かなレストランのバックミュージックでもなく。
奏くんの紡ぎ出すクラシック調のピアノ曲が私を包み込んだ。
「綺麗」
音を綺麗と表現する事が、正しいのか分からないけど。
そう表現する事が何よりもしっくりする演奏だった。
「凄い。奏くん」
「村松さん」
「あ。柳下さん。このまま成功すると良いですね」
「小野寺、奏だよね。村松さんと知り合いだったなんて驚いたよ」
「奏くんを、ご存じなんですか?」
「ああ・・・・」
そう言ったまま、柳下さんはお茶を一口飲んだ。
「昔、知ってた。
小野寺がコンクールに出て来た時、すごいと思ったよ」
「・・・・って。柳下さんピアノをやってたんですか?」
意外だ。