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オーバーナイトケース
第2章 流れるだけ・・
結婚を約束していた男は、ある時を境に私に暴力をふるうようになった。
なにが原因なのか、私なのかそれとも仕事や他のことなのかもわからないまま、
私は彼から逃げ出した。
35歳の時だった。
それ以来、男と付き合う気が失せた。
男を信用する気も失せた。
なにもかもが嫌になったが、仕事だけは手放さなかった。
これがなくなったら私は本当に生きていけなくなる。
気持ち、よりも経済的な心配のほうが上回ったのは、
一人で生きていく覚悟ができたからかもしれない。
一人は気楽でよかった。
なにをするのもどこへ行くのもなにを食べるのも、なんでも自分の思い通り。
時々学生の頃からの女友達と会ってしゃべって美味しいものを食べて。
それでいいと思っていた。
だが40を超えると途端に寂しさの波が押し寄せてきた。
このまま独りで死んでいくのか・・
そんな時に浩介と出会ってしまった。