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オーバーナイトケース
第3章 不思議な出会い

私たちの前に今度はワイングラスが置かれ
アイスペールに入った白ワインと、少量だがチーズの盛り合わせまでサービスしてくれた。

私も一杯いただきます、とバーテンも自分のグラスを用意し、
この不思議な出会いに3人でグラスを合わせた。


フルーティーな甘口のワインが、
さっきまでのとげとげした心を丸くしてくれたように思う。
不思議な縁のあるこの男に、どうして私が今ここにいるのかを
話してみたくなった。


「私ね、この辺に勤めているわけでも住んでいるわけでもないんです。
 たまにしか来たことないの。
 もちろんこのお店もね、今夜初めて来たのよ」

「そうだったんですか・・
 僕は仕事柄よく来る街ですが、この店は初めて入ったんです」


どこまで偶然が重なるのだろう。
お互い初めて入った店だなんて・・


「今夜ここに来たのには訳があるの・・
 でもね、別にここにって、麻布に来ようと思ったわけじゃないの、
 これも偶然・・
 こうして一人でフラフラとバーに入ってきたってことに訳があるんです」


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