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藍の果て
第2章 一夫多妻制
リオの住んでいる場所はパルバナの中でも大きな街の外れにある。
市場やらとは離れているが、山の傍だから空気も美味しければ山菜や果物も季節によって採れるので、お気に入りの場所だ。
宮殿の様な豪邸ではないが、レンガ造りの温かい家。
妙にお洒落を気取っていない造りも、大好き。
「ただいまーっ」
木のトンネルを潜って玄関へと辿り着くと、畑で農作業をする女性へと声をかける。
白い大きなつばを軽く上げて、声に反応したその人物は微笑み返してくるのだった。
「リオ、お帰りなさい。今日は早かったのね」
「うん。お酒やカジノに誘われたけど、断ってきちゃった。ユリアのご飯の方が楽しみなんだ」
「ふふっ。ありがとう。少し待っててね。あ、お風呂なら湧いてるわ。先に浸かったら?」
ユリアは農作業用の作業着だが、背中辺りまで伸びた髪を丁寧に一つに束ねて流し
黄色の肌にしては日焼けをし難そうな白さを保つ。
薄らと色づく唇。
少女としてのあどけなさは少なくなり、大人の女としての艶を含んだ女性だ。
手抜きの様な姿をしていても、その素材の良さを十分に引立たせている。
街でも評判は高いが、彼女の良いところはそれを微塵も鼻にかけていない。
寧ろ、そんな高評価すら気にも留めていない、気づいてない様子なのだ。
だからこそ、リオはある種ユリアの事が気がかりで仕方がないのだ。
〝もう少し危機感を持つべきなんじゃないのかな?”
と、何度も思った事がある。
まあ、それを彼女に指摘した所で、恐らく右から左に聞き流されてしまうのがオチなのだが。
ユリアがこんな女性だ。勿論隙あらばと狙っている男達も少なくない。
しかし、それが無謀であると彼らは分かっているから、涙を呑んで諦めているのだ。
何故なら、彼女は……。
「もうすぐデイジーも、戻って来るんじゃないかしら?戻ってきたら、一緒にご飯にしましょう」
そう。彼女は、リオを助けてくれた恩人、デイジーの第一妻となった女性だからだ。