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藍の果て
第4章 バルトの復讐者
『……、あんまり、俺の弟子と嫁をからかわないで貰えると助かるんですがね、陛下(ヘイカ)』
蹴破られるような乱暴なドアの物音とは対照的な、普段聞きなれない敬語を使う男。
雨の中を走って戻ってきたのか、煩わしそうに滴の落ちる黒髪をかきあげる。
おどけた様なくだけた敬語とは裏腹に、鮮やかな程に映える紅い瞳は真っ直ぐにレインコートの男を見据える。
「デイジー!」
リオも漸くその声に安堵したように顔を上げる。
しかし、デイジーの言葉に妙な違和感があった。
「デイジー……、ヘイカって……?」
「あぁ。其処にいる人は、〝バルト″の国王だからな」
腕組みをしたデイジーは、何でもない調子で簡単に紹介を流す。
こくおう……コクオウ……国王!??
「えっ!??えぇぇぇっ!?」
リオの叫び声が廊下を響き渡れば、忌々しそうに当事者のレインコートの男が顔を顰めた。
微かだが舌打ちすら聞こえた気がする。
こんな荒々しい獣の様な男が国王!?
「気色悪ぃ言葉遣いをやめろ。俺はテメェを許した訳じゃねぇ!」
あからさまに男の怒気を孕んだ口調に怯むことも臆する事も無く、デイジーは大袈裟に肩を竦める。
困った様な表情を浮かべているが、その真意は掴めない飄々とした口調。
「許すも何も、俺はあんたに恨まれるような覚えが無い。今日は、こんな田舎に平民の視察でも来たんですか?陛下」
「あぁ!?何寝ぼけた事言ってやがる!テメェ、あの時の事……忘れたとは言わせねぇぞ!!」
低く唸るように男の掠れた声は、その殺意とともにデイジーに向けられていた。
蹴破られるような乱暴なドアの物音とは対照的な、普段聞きなれない敬語を使う男。
雨の中を走って戻ってきたのか、煩わしそうに滴の落ちる黒髪をかきあげる。
おどけた様なくだけた敬語とは裏腹に、鮮やかな程に映える紅い瞳は真っ直ぐにレインコートの男を見据える。
「デイジー!」
リオも漸くその声に安堵したように顔を上げる。
しかし、デイジーの言葉に妙な違和感があった。
「デイジー……、ヘイカって……?」
「あぁ。其処にいる人は、〝バルト″の国王だからな」
腕組みをしたデイジーは、何でもない調子で簡単に紹介を流す。
こくおう……コクオウ……国王!??
「えっ!??えぇぇぇっ!?」
リオの叫び声が廊下を響き渡れば、忌々しそうに当事者のレインコートの男が顔を顰めた。
微かだが舌打ちすら聞こえた気がする。
こんな荒々しい獣の様な男が国王!?
「気色悪ぃ言葉遣いをやめろ。俺はテメェを許した訳じゃねぇ!」
あからさまに男の怒気を孕んだ口調に怯むことも臆する事も無く、デイジーは大袈裟に肩を竦める。
困った様な表情を浮かべているが、その真意は掴めない飄々とした口調。
「許すも何も、俺はあんたに恨まれるような覚えが無い。今日は、こんな田舎に平民の視察でも来たんですか?陛下」
「あぁ!?何寝ぼけた事言ってやがる!テメェ、あの時の事……忘れたとは言わせねぇぞ!!」
低く唸るように男の掠れた声は、その殺意とともにデイジーに向けられていた。