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藍の果て
第4章 バルトの復讐者
2209年 DEADEND バルト
DEADENDでは、都市の一つ一つが、それぞれのルールを持って自立している。
地球の国と同じで、人種も違えば文化も異なる。
パルバナは富豪が多いが、鉱山と緑しかない田舎町。
実質、このバルトという都市がDEADEND全体の実権を握っている。
パルバナとは比べ物にならない程の土地を有し、人口も多い。
そして、金を持った人間がのし上がれるパルバナと違い、バルトは実力社会。
つまりは、強い者が生き残るという、治安は悪いが分かりやすいシステムだった。
強い者が祀り上げられ『王』と呼ばれ政権を握る。
バルトは王政の中で成り立つ都市だった。
男はそんな分かりやすい環境を気に入っていた。
腕にも自信があったし、大人だろうが平伏させる満足感は渇望した支配欲を満たされた。
男の名前は<シルヴァ>と言った。
バルトに生まれ、幼少期も此処で過ごしたシルヴァは、当然のように王になると考えていた。
下剋上もありの都市で、王の家来に決闘を申し込んで、そのまま城勤めにまでは成り上がった。
そこまでは、彼の中で順風満帆な人生だった。
が……。
「勝者、デイジー!」
あの日自分が王の家来にそうした様に、今度は自分が床に転がされた状態となっていた。
同期の連中が呆然とした表情で見つめる中、シルヴァは屈辱を味わった。
ただあの頃の自分との違いと言えば、目の前に立つ勝者の男は、高揚感も感慨も無さそうに、此方を見据えているだけだった。
デイジー・クルスは奇妙な男だった。
パルバナ出身と口にしていた通り、田舎特有の黄色の肌をしていたが、似合わない鮮やかな真紅の瞳が印象的だった。
自分の事を語ろうとしない同僚は別段デイジーが特別と言う訳ではないが、それにしても殆どの情報がデイジー・クルスに至っては無いに等しかった。