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藍の果て
第4章 バルトの復讐者
バルトの人間は、どこかパルバナ民族を下に見ている。
金に物を言わせて自分の弱さを隠そうとする民族は、根っからの戦闘種族であるバルト民族には受け入れられない。
だからなのか、黄色人種のデイジーは城勤めの中でも浮いていた。
「なぁ、こっち来て……飯、食わねぇのか?」
「俺は此処でいい。あんたこそ、俺に関わってたらオトモダチに何か言われるんじゃないか?」
口数も余りない、無口で不愛想な奴だと思っていた。
おまけに余計な事も口にする皮肉屋。
気に入らない奴だったが、引き下がるのも癪な気がして隣に勢いよく腰を下ろした。
少し驚いた様な紅い瞳がシルヴァの方へと向けられ、小さな勝負に勝った気がして悪い気はしない。
「別に友達じゃねぇ。あいつらも、テメェも」
本当の事を口にしただけだが、隣の奇妙な奴は肩を震わせて笑っている。
少し蹲り声を殺して笑っているのが、一層腹立たしい。
「あ?さっきから、何笑ってんだ!?」
「っ、いや、ふっ、くくっ……。いや、正直だと思って。そうだな、俺たちは友達じゃない。ははっ」
「――っ!?」
デイジーが笑った顔を初めて見た。明らかに馬鹿にした様なタイミングだったので、腹の立つ男だという印象から、本気で腹の立つ男に上書きされただけだったが。
しかし、シルヴァにとっては生まれの土地によって本来強い人間を見誤る真似はするつもりはない。
デイジーは強い。それだけだ。
それ以降、デイジーと組まされて仕事をする事も多くなった。