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藍の果て
第5章 生存者


「なんでっ、何で、こいつがまだ家に居るんだよ!??」


階段を駆け下りて、抗議とも取れる言い分を言い放つ。
既にキッチンへと料理に勤しむユリアも、眠そうな欠伸(アクビ)を時折こぼし彼女の朝食を待つデイジーも、特別気にした調子でもなく答えた。



「覚えてないのか?リオ。 執念深いどこかの国王様は、俺をバルトに戻すまで居座り続けるらしい。

暇なのか、モテないのか、働きもしないタダ飯食いを養う立場にもなって欲しいもんだ。そうですよね?陛下」



「誰がタダ飯食いだ、誰が!納得いく答えを聞くまで帰れるか!」



しれっとした表情で皮肉を返すデイジーに、いちいち食ってかかるシルヴァ。
そのやり取りを、ただ苦笑しながらも、ユリアは四人分の朝食を運ぶ。
口ではあんな事を言っていても、恐らく此処に残ることを認めたのはデイジーだ。



自分の命を狙った男に、情けでもかけているのだろうか?


このぎくしゃくした空気を打ち破ったのは、人一倍気づかいに長けたユリアだった。


「ねぇ、リオ。食事が済んだら、デイジーと市場まで買い出しを頼めるかしら?」



「デイジー、と?でも……」



リオは思わずシルヴァへと警戒の視線を向けたが、鼻を鳴らし物凄い勢いで顔を逸らされシカトされてしまった。
相変わらずいちいち癇に障る。





「大丈夫よ、私なら」



優しい落ち着きのある耳打ち。
顔を離したユリアは優しく微笑んで、用件を手短にデイジーにも伝えていた。



食事が済むとユリアとシルヴァを二人きりにする不安はあったものの、リオは袋を手に取ってデイジーと共に家を出る。
市場までは暫く歩かないといけない。
リオも三年前と比べると身長は高くなったとは思うが、やはりデイジーと並ぶと体つきも子供らしさが抜けてないと痛感させられる。



市場が近くなると人口密度は高くなる。行き交う人はデイジーの事を物珍しそうに見つめては、視線を置き去りに注意力も散漫(サンマン)になっている様だった。
デイジーの瞳の物珍しさは、不思議がられたり、気味悪がられたり様々だ。
それでも、リオは彼の瞳を気味悪いと思った事は一度もない。



——綺麗だなぁ。





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