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藍の果て
第5章 生存者
鮮やかな赤の瞳に、伏せる様に並ぶ長い睫毛。やや日に焼けた黄色の肌に、リオの手など簡単に包み込めるであろう大きな掌。
男の人に使う形容詞では無いだろうが、デイジーは綺麗だ。
それは女の人が嫉妬する程に……。
「……リオ?」
不意に名前を呼ばれて、傍にいる彼を見つめ続けていた事に今更ながら気づく。
我に返ると赤い視線が自分を見つめている事に気づいて、意味も無く姿勢を正した。
「え?な、何?何の話だったっけ?」
「?。いや、さっきから何か言いたげにこっちを見てたからな。どうかしたのか?」
「へ?あ、あ、そう?あっ、デイジーと市場に出かけるの久しぶりだなって思っただけ」
間抜けな声を出してしまった。
焦って誤魔化したが、今更ながら普段一緒に生活する家族同然のデイジーに見惚れていたなんて、口が裂けても言えない。
言えば、確実にからかわれるのは目に見えているからだ。
「そう言えば、そうだな。久しぶりに何か買ってやろうか?」
「えっ!良いのっ?」
頷く代わりに何時もと同じく、わしゃわしゃと頭を撫でられる。
子供扱いの気がして複雑な気持ちだが、それでも素直に甘えられる、その行為は嫌いじゃない。
何より、デイジーの手に撫でられると落ち着いて、温かい気持ちになる。
「ありがとうっ。何にしようかな。あ。あっちのお店見てきても良い?」
「俺は、そこで待ってる。余り遠くへ行くなよ」
リオは少し気になっていた店を見つけて人の波を掻き分けるように、その波の中へと姿を消した。