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藍の果て
第5章 生存者

「あの……、すみません」
胸の締め付けられる想いは、背後の申し訳なさそうな謝罪によって現実へと引き戻された。
振り返ると少年は頭を垂れて自信無さそうに謝るまま顔を上げない。
「……ううん、大丈夫。あ、さっきの人。デイジーっていうんだけどさ。ごめんね。でも、悪い人じゃないんだ」
今更、弁解をした所で、少年の目に映ったデイジーの印象は変わる事はないだろうが、それでも彼を憎んでほしくなくて言葉を足す。
少年は眉を下げながら微笑み顔を上げると、ゆっくりと首を横に振った。
「いえ、あの人の言っている事は間違ってない。賢い選択だと思います。
見ず知らずの奴隷に手を貸して、見つかりでもしたら大変な目に遭うでしょうし……
それより、僕は……その、君の方が、心配で……」
「え、ぼ、僕!?大丈夫だよ、僕は。あんなの、よくある事なんだ。気にしないで良いからね」
予想に反した言葉に驚いて、思わずこれ以上の気を遣わせまいと咄嗟に嘘をつく。
本当は、デイジーとこんな風に喧嘩する事は、初めてだった。
ずっと座り込んでいる少年に手を差し伸べて、微笑んでみる。
彼の言葉があったからなのか、先ほどより少しは胸の痛みは和らいでいた。
少年は立ち上がってみると、少しリオよりも背が高い様だった。
背中しか見なかったから、余り気にしなかったが、同い年くらいなのだろうか。
「僕はリオ。リオ・シャーロン。パルバナのこの山の奥に暮らしてるんだ。君は?良かったら、名前教えてよ」
「僕は、ジーク・ヴィドル。……、実は……、僕は、ここの人間じゃないんです」
「え……?」
少年・ジークの言葉に一瞬妙な胸騒ぎがする。
言葉を何か返す前に、彼は悲しそうな笑顔を見せながら小さな声で問いかけてきた。
「三年前、バルトとパルバナの境の砂漠地帯に、未確認飛行物体がぶつかった惨劇をご存知ですか?」
足が震えて、言葉をかけたいのに上手く口が動かせない。
胸のざわつきは次第に大きくなっていき、動悸も早くなって全身に聞こえてくる様だ。
数十人の客席の悲鳴、助けを呼ぶ声がフラッシュバックする。
ジークはリオの状況を飲み込めていないのか、核心を口にした。
「僕は、その三年前の事故の生き残り。地球という惑星から来た、異端者です」

