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藍の果て
第7章 疑惑
「まだ、こんな所に居たのか?」
二人の沈黙を思わぬ形で破って来たのは、数時間前に冷たい言葉で突き放し姿を消していた男だった。
「デイジー」「デイジーさん」
二人とも重なる様にその人物の名前を呟いたが、意思を曲げるつもりはないのか呆れたため息だけが返ってくる。
「日が落ちれば、ここも危険な事は分ってるだろう。リオ」
「デイジー。お願い、ジークも連れていこうよ。だって、ジークは……」
「まだ、そんな事言ってるのか?」
再び厳しい言葉と共に、彼の瞳は鋭さを増していく。
萎縮しそうになったリオだったが、ジークの内情を知っているだけに簡単に引き下がる訳にはいかなかった。
「ジークは、僕と同じ<異端者>なんだよっ。放って置けるわけ無い!」
「!?。……っ、異端者……?」
リオの言葉に衝撃を受けたような表情を浮かべたデイジーだったが、ジークに視線を移すと、リオの説明を肯定する様に頷いた。
「はい。僕もリオ君と同じ……三年前に起こった惨事の生き残りなんです。地球という惑星から来た、貴方達からすると異星人なんです」
「ジーク……ジーク、か」
口元に手を覆いながら一人何かに囚われた様に、その名前を何度も復唱し、デイジーは何やら考え込んでいる。
流石に違和感にでも思ったのか、ジークの表情までもが次第に険しいものと変わってくる。
「デイジーさん?僕の名前に……、何か?」
「……いや。ジーク、あんた……フルネームは、何て言った?」
「ジーク……ヴィドルですが?」
「以前、俺に会ったことが……あるか?」
「え?」
リオとジークは互いに目を合わせたが、直ぐにジークは首を横に振る。
困った様に微笑みながら肩をすくめて見せる。
「僕とデイジーさんが、ですか?いえ、初対面だと、思いますが……デイジーさんは、僕に見覚えが?」
不思議そうに首を傾げたジークだったが、先ほどまでの厳しい視線は嘘であったかのようにデイジーの視線は柔らかくなる。
ゆっくりと首を横に振る彼は、何時ものおどけた口調へと戻っていた。
「いや、何でもない。人違いだ。それより、ジークだったか?
良いだろう。リオも強情な上に頑固だからな、乗りかかった船だ。少しの間なら匿おう」