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藍の果て
第7章 疑惑
「ちょっ、と……待って下さい。何……で」
家に戻ったリオ達は、我が家というのに居心地の悪い圧迫感に抑え込まれていた。
立ちあがったまま温厚そうな瞳を吊り上げて、ソファーに悠々と座っている男を指さしながら、デイジーに抗議する。
「何で……何で、ここに、バルトの王が居るんです!!?こんな男を招き入れてるなんて……!」
「あぁ?何だテメェは。俺がどこに居ようが、俺の勝手だろうが」
説明を受けないまま、居候身分として連れてきたジークの存在に、牙の様な八重歯を剥きだし、柄の悪い切れ長の瞳を更に細める。
が、状況的に板挟みの位置に立たされたデイジーは、人の好さそうな笑みを張り付けたまま試す様にジークに問いかけてくる。
「悪いが、ジーク。ここに居座るという事は、ここに居る面々にも慣れて貰わないと困る。
それとも、またバルトの生活に逆戻りしたいのか?」
「おい、待て。デイジー……、バルトの生活に逆戻りってどういう事だ?このガキ、一体何なんだ?」
「ああ。ジークは、バルトで奴隷だった男だ」
「デイジー!!」
まさか、ジークの三年間の屈辱を、あろう事かシルヴァにあっさりと話してしまったのだ。
叱責の混ざるリオの叫びと共に、ソファーから思わずシルヴァも立ち上がる。
野犬が余所者に吠える、そんな怒気を孕んだ口調。
「奴隷だと!?何でそんな奴が、こんな所に居る!?」
「……、それを貴方が言うんですか?そもそも、僕らにも居場所はそれぞれに有った。それを有無を言わさず、力を振りかざし無理矢理に連れ込んだ、貴方達が!」
「奴隷でしか生きる術が無かったテメェらを生かしてやったんだ。命を長らえただけ、ありがてぇと思え。
それを奴隷の分際で俺に異見するとは、身の程を知らなすぎるにも程があるぜ。そんなに死に急ぎてぇなら俺がっ……」
次の瞬間、ぱんっと小気味いい音がリビングに響き渡っていた。
思い切り払ったリオの手元と、狼の様な男の色白の頬にくっきりとある赤い印。
ギラリ、と眼光を光らせる様な鋭い視線がリオに向けられる。
「っ! テメェ……」
「バルトがどうとか、奴隷がどうとかっ、関係ない!ここは、パルバナで、僕とユリアとデイジーの家だ!
文句があるなら、さっさとここから出て行け!!」