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藍の果て
第8章 交渉
「そんなっ……、ちょっと、ちょっと待って!急にそんなっ」
狼狽で言葉も上手く羅列出来なくなってしまったユリアにも反応せずに、シルヴァはリオの表情を見つめていた。
目の前の子供は、恐らく憎らしいと恨めしいと思っているに違いない。
それに追い打ちをかける様に、決別のリミットを告げる。
「決まりだな。明日一日は待ってやる、出発は明後日で決まりだ。
サラ、お前は先に戻って、城の奴らに報告しとけ」
「えぇ、勿論よ。それじゃ、お先に……シルヴァ様」
恭しくお辞儀をしたかと思うと、サラという女性は用件は済んだとばかりにリビングを後にしようとする。
その際に一度だけ、デイジーに何か告げようと視線を送った様な気がしたのは、気のせいだろうか?
「俺も支度がある。もう用件は済んだろ、部屋に戻るぜ」
バタリ、と何の感慨もなく閉められた扉の音と同時に、その場に崩れる様にユリアが座り込んだ。
ジークが駆け寄ってリオの手を思わず掴む。
「リオ君!考え直してくださいっ、僕が……僕が戻れば済む話です!」
「ジーク……。ごめん」
「何で、リオ君が謝るんですか?僕は……っ」
「そうじゃないんだ!!」
手を握ってきたジークの手を掴んで、思わず彼の自責の念を止めようと声を荒げる。
首を振りながら、ゆっくりとその手を離させる。
「そうじゃない。僕は、確かにジークを護りたいって思ったけど……、バルトに行く理由を決めたのは、それだけじゃない。
さっきは、僕が行く理由なんて無いって言ったけど……、きっと、それはあいつの、シルヴァの言いなりになっちゃう気がして嫌だった。けど、僕は少しだけ、バルトという場所を見てみたいって気持ちもあるんだ」
ここ数週間で沢山の事が起こった。リオは平穏とパルバナで生活していくと思っていたのに、覆る様な大きな出会いや事件が起きた。
それは、三年前のあの追突事件を思い出すキッカケにもなった。