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藍の果て
第8章 交渉

「これ……い、いいの?」


嗚咽混じりに問いかけると、小さく頷いたデイジーは変わらず頬の涙の痕を拭う。
リオの細い腕を掴んでから引き寄せると、その肩を貸し、リオの身体を包み込む様に抱く。
腕の中にすっぽりと納まる華奢な肩は、未だに小さく震えていた。


「だから、これが最後じゃない……。必ず迎えに行くからな」


耳元で囁かれたのは、お別れの言葉じゃなく、また出会う為の約束。
気づくとリオは彼の背中に腕を回して、何度も何度も頷いた。
何故だろう。あの時と同じ……、デイジーなら、必ず迎えに来てくれると、そんな確信があったのだ。



「ん……うんっ。うんっ。分かった。また、会おうね……」







































それから過ごす一日は忙しかった。
鉱山の仲間たちにも挨拶を済ませると、仲間たちは惜しみながらも激励をくれた。
ここには、パルバナに残るジークが迎え入れられる事となり、鉱山の男達は直ぐにでも歓迎会を開くと騒ぎ立てていた。
何時も通りの仲間に安心し、お別れを口にしてきた。



そして、出発の日。




出来るだけ身軽な状況で向かいたかったリオは、殆ど私物を持っていく事は無い。
バルトに着いて全てを揃えれば済むとも思っていた。
旅路に必要な着替えを何着かと、小刀、そして、デイジーに預かったネックレスだけは肌身離さず身に着けている。



「それじゃあ、ジーク。ユリアの事を宜しくね。ユリアも、元気でね」


既に決まった出来事に、何かを言いたそうな二人も、その言葉は飲み込んで頷く。

「はい。リオ君もお元気で……。必ず、ユリアさんの事は護ります」


「リオ……気を付けていくのよ。バルトは、何があるか分からないし……もし、辛くなったら……」


「大丈夫だよ。別に向こうに行っても独りぼっちって訳じゃないしさ。だから、心配しないで」


ユリアを宥めるように微笑んで、これ以上の心配をかけさせない為に元気に振る舞う。
それに、デイジーの言葉のおかげなのか、心は大部分落ち着きを取り戻していた。
二人に改めて頭を下げて手を振った。


「それじゃあ、行ってきます」

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