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堕散る(おちる)
第22章 step22十六段目…初冬
「あ〜腹いっぱい、中華は当分いいや」

「ハルト大丈夫ですか?」

「ああ、なんとか
ルリ他に食べたいものある?」

「へ…もう十分です。」

店に来るまでは、街中に溢れる食べ物の匂いに食欲をそそられたが、今はそれも苦しい。

アタシたちは逃げるようにしてその街を出た。

大通りに出ると不思議な馬車のようなものがある。
その隣に飛脚というのか足袋に法被姿の男性が立っていた。

「これは何?」

「人力車ですよ。」

「あなたが引っ張るの?」

「そうです。」

「乗れる?」

男性がコースと料金表を見せてきた。

「じゃあこれで…
ルリ、乗るよ」

踏み台が置かれハルトが先に乗る。

続いて登るアタシの手を引き隣に座らせてくれた。

「では出発しますよ。」

足元にあるラジカセのスイッチを入れて男性が車を引き始めた。

ラジカセから街の名所の説明が流れ、ゆっくりと車が動き出した。

車道の端を進むのだけど、乗用車より高いところから、ゆっくりと変わっていく景色はまた違って見えた。

「楽チンだね。」

「でも引っ張る方は大変でしょうね。」

「ちょっと寒いかな?もっとこっちにおいで…」

ハルトにぴったりくっつくと、マフラーを外して二人にかかるように巻いてくれた。
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