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背後偏愛サロン
第1章 とまどい
 スカートはゆっくりと尻の上までまくられていく。
 コートの裾が尻を隠していたはずだ。それも一緒に持ち上げているのか。
 ――待って……
 ――やめて……!
 尻が、脚が、ふるふるっ……と震え出す。

 前回は身体はおろか、衣服にさえ一切触れられることはなかった。
 ましてスカートをまくり上げられるなど――
 こんなことは聞いていない。メールにも便箋にも書かれていなかった。

 詩織は呼び鈴の紐に目をやった。
 引いた方がいいのだろうか?
 しかし詩織の身体は震えるばかりで、全身どこも動かせなかった。
 身体が、言うことを聞かない。

 スカートとコートをつかんだ男性の片手を、腰で感じる。
 であれば、タイツとショーツに包まれているとはいえ、詩織の尻は丸出しということになる。
 コートをはぎ取られることはなく、マフラーもそのまま、ブーツも履いたままだ。
 尻だけが、丸出しなのだ。

 コンプレックスである尻の丸みを、素性も容貌も分からない男性にじっと見られている。
 詩織は、羞恥心から顔から熱を放っているのを感じた。
 濃いめの色のタイツを履いていても、ショーツは透けて見えているはずだ。

 今日履いているのは、薄水色の、柄も飾りもないシンプルなスタンダードショーツだった。
 もっと色気あるショーツを履いてくれば良かった――いきなり尻を丸出しにされてとまどっているはずなのに、そんなことを考えてしまっている自分に、またとまどった。

 ――だいじょうぶ……
 ――このままじっとしていれば……
 ――私が誰だか分からないんだから……
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