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背後偏愛サロン
第2章 渇き
2.渇き


(1)

 土曜日の夕方、詩織はキッチンに立って晩御飯の準備をしていた。
 詩織の後ろ、リビングのテーブルでは、夫の和真が器用な手つきで折り紙を折っている。

 趣味というほどのものではないが、和真はちょっとした合間に折り紙を折るのが好きだった。
 折るのは決まって鶴だ。
 そして上手に折れればしばらくそれを満足そうに眺め、出来に納得しなければすぐに新しい紙で次の鶴を折り始める。

 かといって出来の良いものをどこかに飾るでもなく、ある程度満足すると不出来なものと一緒にあっさり全部捨てる。
 和真曰く、このデジタル全盛の時代に、自らの肉体を使ってできる限り細かく正確に作業することが、いい気晴らしになるらしい。

 詩織も、和真の手先の器用さには感心していた。
 詩織は黙々と紙を折り続けている和真に背を向け、まな板で手早くにんじんを刻んでいた。

 その時――
 おもむろに、尻に『生暖かい液』を掛けられた感触がよみがえった。

 ――また……
 思わず、左手で尻に触れる。
 もちろん、なにもない。
 それでも詩織の尻は、あの感触を鮮明に憶えている。
 そして何度も何度もそれを思い出す。

 あんな風に『オス』のほとばしりを身体に掛けられるなんて、初めてのことだった。
 ましてや、和真のものではない、見ず知らずの男性の――。
 また胸の鼓動が速まる。
 当てている手のひらと尻の間に、ねっとりとしたものが挟まっている気がしてくる。
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