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背後偏愛サロン
第1章 とまどい
× ×
これを読むのはもう何度目だろう。
二月下旬の真冬の空の下で、詩織は道路の端にたたずんだまま寒さを感じるということを忘れて、右手で手さげのバッグを持ち、左手のスマートフォンに映し出されているそのサイトの文面を読み返していた。
初めてこのサイトにたどり着いた時、詩織はすぐにこの文面に惹きつけられてしまった。
そして何度も何度も読み返し、今もまたこうして読んでいる。
その文面の下には、いくつかの写真が並んでいる。
全部屋内で撮られた、立ったままの女性の後ろ姿だ。
ハーフコートにブルゾンにダッフルコート、フレアスカートにプリーツスカートにニットワンピ、ロングブーツにショートブーツ……。
今の季節に合わせた写真を集めているのか、冬の装いばかりが並ぶ。
一枚だけショートパンツの写真があるが、あとは全部スカートで、たいていブーツ、タイツとの組み合わせだ。
やはり『サロン』の男性たちは脚のラインが見えるものを好むのだろうか。
『いつもの服装で』と言っておきながら、暗に『脚の見える服装で来るように』と言われているかのようだ。
派手な色合いの服装は見当たらない。モノトーンやブラウン、ベージュといったところで、奇抜なデザインもなくスタンダードなものばかりである。
街を歩いていれば普通に、しかも数多く見かける女性のコーディネートだ。
みんな上着を着ているためにはっきりとは分からないが、脚を見る限り決して全員がスタイル抜群というわけではなさそうである。
プロのモデルなどではなく、スタイリストがついているわけでもなく、一般の女性であることはすぐに分かる。