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背後偏愛サロン
第2章 渇き
 その時、詩織の耳に、一昨日『サロン』で浴びせられた『オス』の息づかいがよみがえってきた。
 『ハァァッ……』
 『ハァァッ……』
 『ハァァッ……』

 とまどいを感じている詩織をよそに、身体はクリトリスを中心に一気に熱を帯び、小さな波が束ねられて大きな波になってくる。
 「んはあっ……ぁ……ぁ……っ……」
 また声が漏れる。
 一気に、クリトリスが放ったしびれが全身を駆け抜け、詩織は身体をびくびく震わせた。

 詩織はしばらくその余韻に浸っていたが、やがてそれが引いてくると、膣の中に精液が流し込まれていることに気づいた。
 その感触は、詩織にとってむなしい感触だった。
 どうせ妊娠など、できないに決まっている――。
 渇いてしまう自分を自らの指でせっかく潤しても、今度は終わったあとのその感触が詩織を凍てつかせていく。

 枕から顔を離すと、いつの間にか和真は詩織に背を向けてベッドの端に腰掛け、数枚のティッシュとともに股間あたりに手をやっていた。
 和真はいつも通り、何も言わない。
 やがて和真がブリーフを履いて寝室を出て行った。

 詩織は枕元にあるスマホを手にした。
 そしてしばらく何も映っていない画面を見ていた。
 ――またあんなことされるかもしれないのに……
 ――いいの……?
 詩織はスマホを枕元に戻した。

 しかしすぐに詩織はスマホに手を伸ばし、画面を操作してメールアプリを立ち上げた。
 詩織は少しだけためらった後、『月曜日12時以降空いてます』とだけ打った。

 ――……
 詩織の指は送信ボタンの上を通り過ぎ、キャンセルボタンを押した。
 スマホを置いた詩織は、そのまま布団の中に深く潜った。
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