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背後偏愛サロン
第2章 渇き
※ ※ ※
「あたしこの部屋がいい!」
居眠りのあと、詩織があり合わせで作った夕食をたいらげた愛海は、はしゃぎながら言った。
そこは和真が書斎代わりに使っている四畳半の小さな部屋だ。
「マナ、ここ狭いし、あっちの広い和室準備するから」
「面白そうな本いっぱいあるもん」
「お! さすがは理工学部。どれでも好きなの読んでいいよ」
「ちょっとカズくん……」
「いいから詩織、少しの間だけだろ?」
常日頃、和真の仕事の邪魔だけはしないように心がけている詩織は、それとなく書斎を使わせないよう気を回したつもりだったのに、それをふいにされてしまった。
和真はむしろ、自分の『領域』に興味を示してくれる愛海を歓迎しているようだ。
愛海は立ったまま手を伸ばし、棚の上の方にある本を取ろうとした。
結婚式以来、三年ぶりに見る愛海の姿はすっかり大人びていた。
もともとはっきりとした目鼻立ちだったが、まだ幼さを残しているものの、凛とした色気をその顔にまといつつある。童顔の詩織とは対照的だ。
今ですでに背が詩織とほぼ変わらない。まだもう少し伸びて近々抜かされるかもしれない。
髪は艶のある、毛先に向かって少しくせのあるショートボブで、それが一層大人びた雰囲気にさせている。
体にフィットした長袖Tシャツは均整の取れた女らしいうねりを浮き出させ、短めのフレアスカートは腰からヒップへの綺麗な曲線を際立たせている。
脚は黒タイツに覆われていて、その愛海の後ろ姿を見たとき詩織は――
『サロン』のサイトに並ぶ写真を思い出した。
あの中に混じったら――
スタイルが良すぎて浮いてしまうかもしれない。