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背後偏愛サロン
第2章 渇き

(2)

 愛海が家に転がり込んできて三日が経った。
 今朝も詩織は『サロン』へのメールの送信ボタンを押せずにいた。

 長い時間、家を空けると愛海に怪しまれないか――
 いや、何も愛海に遠慮する話ではない。
 愛海は赤の他人ではないのだし、その上マイペースな娘だから放っておいても構わないだろう。詩織は好きなようにすればいい。
 それでもどことなく、勘の鋭い愛海に行き先を気づかれそうで踏ん切りがつかない。

 しかし――
 本当にそれが『サロン』へ行くのをためらう理由だろうか――?
 和真に申し訳ないと思いながらも、自分の中にある衝動が抑えられないことの罪悪感が本当の理由なのに、見て見ぬふりをして愛海のせいにしているのではないだろうか?

 愛海は和真と気が合うようだ。険悪な雰囲気になられるよりはいいが、なぜか詩織は魚の小骨が喉に刺さって取れないような感じがしていた。

 愛海は我が家のようにリラックスして、自由気ままに過ごしている。
 深夜のオナニーも日課のごとく欠かさない。
 本当に部屋を探しに行こうとしているのだろうか、と思うほど、家に入り浸ったまま動かない。
 そのくせ、詩織がスーパーなど近くに買い物に行く時には必ずついてくる。

 もしかしたら――
 愛海が家に転がり込んできたのは、神様か何かが詩織に『サロン』にはもう行くな、と告げているのではないだろうか?



 もう十時を回っているが、愛海は今朝はまだ書斎から出てこない。
 寝ているのだろうか?
 朝食の用意はしてあるが、まだ寝ているのなら一旦片付けた方がいい。
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