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背後偏愛サロン
第3章 誘い
 「もうすぐハタチだよ? ハタチ過ぎても飲んじゃダメ?」
 愛海がそう言うと、和真はうなずいた。
 「ダメなのはお酒だけ?」
 愛海がほほ笑みながら言う。
 詩織には、その顔が『少女』には見えなかった。
 「……タバコもかな」
 「んじゃ、お酒とタバコ以外はいいんだ?」
 「……さ、食べよう」
 和真は苦笑しながら自分のグラスにワインを注いだ。

 三人で乾杯したあと、愛海は次々と料理をおいしそうに平らげていった。
 その顔は『少女』に戻っていた。
 和真も普通に食事をしているが、しきりに詩織に話しかけてくる。愛海の方を、見ない。
 一方で、愛海は構わず和真に話しかける。

 詩織は、和真が愛海からの強引な質問に仕方なさそうに答えている時、さりげなく席を立ってリビングを出た。

    ※  ※  ※

 詩織は寝室のベッドの掛け布団をはがしてみた。
 ざっと見る限り、愛海の髪の毛は落ちていない。
 ゴミ箱も、詩織が朝片付けたままで空っぽだ。

 家には、コンドームはない。
 洗濯かごに汚れたタオルもなかった。
 必ず、ティッシュを使うはずだ。

 詩織は書斎に入った。
 相変わらず、愛海のキャリーバッグは横倒しで開け放たれたままだ。
 ここでは毛を探す必要はない。
 もともと和真の書斎なのだから、彼の髪の毛も愛海の髪の毛も両方落ちてて当たり前だ。

 詩織はゴミ箱を見た。
 丸められたティッシュがいくつか捨てられている。
 考えたくもないが、精液は拭き取ったか、飲んだか、あるいは――膣内に出したか、だ。
 まさか『子供が欲しい』なんて理由で愛海を妊娠させる気でもあるまい。
 膣内に出すような無茶はするとは思えないが――
 いずれにしても、終わったあと必ず何かでぬぐうはずだ。
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