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背後偏愛サロン
第3章 誘い
 ――それでも……いいかも……
 ――組み伏せられたい……

 顔を見られるような行為ができないことが、歯がゆい。
 詩織は、ゴツゴツとした手で、尻やももだけでなく、腹や、腰や、背や、乳房をやみくもにまさぐられるのを想像した。

 身体は熱くなっていく一方だ。
 マフラーを外したい。
 コートも脱ぎたい。
 全部、脱ぎたい。
 しかし『人形』である詩織には、自分の意志では何もできないのだ。
 一方的に、もてあそばれるしかないのだ。
 それが――
 たまらない。

 突然、詩織の身体が勝手にびくついた。
 マフラーをはぎ取られたからだ。
 そして男性の手が詩織の首を、グッ……とつかんだ。

 ……ハ……
 ……ハ……

 詩織の身体は震え出した。
 男性の両手は詩織の細い首をつかんだまま、まるで愉しみながらその形を確かめるように蠢いている。
 男性の手のひらににじんでいる汗が、首にまとわりつく。
 その手のひらが動くと、むき出しになった箇所は汗が空気に触れて冷たく感じる。

 詩織は首に、空気よりもさらに冷たいものを感じた。
 男性の手とは別の物体だ。
 チャラッ……と静かに金属の音もする。
 手の熱と物体の冷たさが、交互に首の表面を動き回る。
 気づけばその物体は詩織の首に巻き付いていた。

 これは多分――
 首輪だ。
 詩織は、首輪をされて、そのリードの端を屈強そうな男性にしっかり握られている自分の姿を想像した。
 まるで、犬だ。
 犬であるなら、いっそ四つん這いにされてしまいたいと思った。
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