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背後偏愛サロン
第3章 誘い
 どれくらいの時間、そうしていたか分からない。
 少しずつ感覚を取り戻してきた詩織は、肉芽が男性のザラザラした指につままれたままだということに気づいた。
 この男性の指で、絶頂したのだ。
 脚が、震えて止まらない。
 腰のロープと手錠がなければ、倒れ込んでいたかもしれない。

 肉芽から指が離れ、カーテンの下から男性の手が現れた。
 スマホを握っている。
 画面には、文字が打たれていた。

   我々は貴女が気に入りました。
   もっと刺激的な提案があります。
   いかがでしょうか?

 最初その意味が全く分からなかったが、詩織は再び身体の芯に火が灯ったのを感じた。
 男はスマホを一旦引っ込め、やがてもう一度画面を差し出してきた。

   いつもとは違うもっと刺激的な場所で、
   貴女をもてあそんでみたいのです。

 本当にいいのだろうか?
 何をされるか全く分からない。
 もう、戻れなくなるかもしれない。
 夫がある身でありながら――。
 和真の存在がありながら――。

   厚かましいお願いでしたね。
   忘れてください。

 次に差し出されたスマホには、そう表示されていた。
 そしてすぐに男性の手によってカーテンの向こうへ戻されていった。

 詩織の目の前に、和真の顔が浮かぶ。
 隣に、もう一人、顔がある。
 愛海だ。
 ――待って……!
 詩織はとっさに手首を振って、手錠を激しくガチャガチャと鳴らした。
 男性の手が、もう一度スマホを差し出した。

   いいんですね?

 詩織は、うなずいた。
 そして少し間を置いて、もう一度うなずいた。

   いつでもこちらに連絡ください。

 男性が次に差し出してきたその文面の後に、メールアドレスが打たれている。
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